M&Aコラム/動画/インタビュー

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2023.06.30

M&Aコラム

日本の海外M&Aにおけるアウトバウンド取引の課題と 経営者がとるべき行動

M&Aは日本国内の企業同士とは限りません。
日本企業が海外企業を買収するケース、海外企業が日本企業を買収するケースについて詳しく見ていきましょう。

 

「アウトバウンド取引」「インバウンド取引」とは

まずは本題に入る前に用語について解説していきます。

ビジネスの世界でアウトバウンドとは
「企業から顧客に対して働きかけて営業や宣伝を行うこと」
を指しています。

その一方でインバウンドとは
「顧客から企業に問い合わせや購入を行うように誘導すること」
を指しています。

これを踏まえてM&Aにおける”アウトバウンド取引”とはどういう意味なのでしょうか?
答えは、「自国の企業が海外の企業を買収すること」

ちなみにインバウンド取引はその逆で
「海外の企業が自国の企業を買収すること」を指しています。

近年、日本の中小企業を中心に後継者不足によりM&Aが注目されています。
経営に困っている売り手企業に助け舟を出せる取り組みですが、グローバル競争が激しくなっている時代なので対象となる企業は日本だけに止まりません。

海外企業を買収する動きが広まっています。

 

第2章:アウトバウンド取引による買い手企業のメリット

近年、M&Aにおいて海外企業の買収を考える企業が増えています。
アウトバウンド取引による買い手企業のメリットは以下の通りです。

①グローバル市場を新規開拓できる
②日本で広まっていない製品や技術の獲得
③経営コストの削減
④許認可を承継できる

①グローバル市場を新規開拓できる

自社の商品がまだ海外に流出していない場合に、アウトバウンド取引によって海外企業を買収すれば新たな市場を獲得できることになります。

顧客のターゲットを変えることで利益拡大を目指します。

②日本で広まっていない製品や技術の獲得

海外企業が所有しており日本にはあまり出回っていないという技術やビジネスモデルを自社に導入できるチャンスです。

日本で新しい風を吹かせるような新製品を開発できるようになるかもしれません。

自社を成長させる鍵が眠っていると言えるでしょう。

③経営コストの削減

コスト削減を考えている経営者の方もいらっしゃると思いますが,
アウトバウンド取引による海外M&Aも一つの有効な手段です。

日本よりも人件費や原材料費・法人税の負担額などが安価な国を選べば、コスト削減につながります。

④許認可を承継できる

新規事業や事業拡大を考えている経営者にとっては立ち上げにかかる時間コストや手間は悩ましい問題です。

特に海外進出となると言語・法律・文化の違いによってより一層手間は増えます。
許認可の手続きが必要となる場合もあります。

しかしM&Aに成功すれば事業の許認可ごと承継できるため時間コストや手間を大幅に軽減できる可能性があります。

 

アウトバウンド取引の手順・注意点

アウトバウンド取引の大まかな手順は基本的に日本と変わらないです。
しかし、言語・法律・文化の違いから決してM&Aが簡単に成功するとは限りません。

慎重に手順を踏んでいくことが大切になります。

【アウトバウンド取引の手順】

①海外M&Aの専門家(仲介会社)や法律事務所に相談

専門的知識が必要な業務なので、専門家からのサポートを受けることが大切です。
専門家からのサポートを得ることで、自社に合った買収相手を見つけやすくなるでしょう。

ここで注意したいのは、専門家を慎重に選定することです。
事前の下調べは入念に行いましょう。

また、海外M&Aに取り組む時に忘れてはいけないのが法律事務所とも相談をすることです。
国内でM&Aを行う場合にはないイレギュラーなトラブルが想定されるからです。

②相談後、本格的にサポートを依頼することが決定すれば海外M&Aの専門家(仲介会社)と委託契約を結ぶ

専門家と相談のうえ、契約の意向が固まれば手続きに入ります。

委託契約には仲介契約とアドバイザリー契約の2種類があります。

仲介契約とは
「買収側と売却側の両方と契約し、お互いが譲歩できる点を見つけて成約につなげていく役割を持つ」という内容です。

仲介契約のメリットとしては主に2点挙げられます。

1.最終的に成約につながる可能性が高い
2.短期間で成約に繋がりやすい

買収側と売却側、どちらの意見も同じ人が聞き入れて調整をすることで素早い進行が期待できます。

一方アドバイザリー契約とは
「買収側か売却側のどちらか一方と契約し、クライアントの利益最大化を目指して成約につなげていく役割を持つ」という内容です。

アドバイザリーのメリットとしては

・自社方針が確実に反映された成約になりやすい

ということが挙げられます。

あくまで利益を追求した交渉が行われるので、自社としての不満点は起きづらくなります。
自社に寄り添った支援が受けられる一方で、交渉が比較的長引いてしまうというデメリットがあります。交渉先への説得が鍵となるので「M&Aを行うことによるベネフィット」を確実に伝えていく技術・準備が重要となります。

どちらの契約タイプを選ぶかは自社の方針をよく確認しながら慎重に吟味しましょう。

③買収先会社の選定

M&A専門家との契約手続きが終われば、次は複数の企業をピックアップして自社に合った買収先を選定します。
この時買い手側は財務状況や業績をまとめた”企業概要書”を比較します。
企業概要書は委託契約を交わした専門家に作成してもらいます。
専門家の事前リサーチが非常に重要であることがここでも理解いただけるかと思います。

買い手側が希望の相手企業を見つけた場合、売り手側の了承も得られた場合にのみ売り手側の企業名とさらに詳細な財務情報が開示されるというシステムです。

後ほど詳しく説明しますが、海外M&Aは独自のルールにより取引可能な会社が絞られます。
法整備を気にしつつピックアップしていく必要があります。

・条件交渉

売り手側と買い手側の双方の了承が得られた段階で条件交渉に入ります。
M&A専門家により買収額の調整を行います。

・基本合意書の締結

条件交渉で大筋合意がなされたら基本合意書の締結を行います。
法的拘束力はなく、あくまで内容確認という位置付けです。

例外として買収側が独占交渉権を得る場合があります。
独占交渉権は法的拘束力があり、売り手側が1,2ヶ月他の企業と交渉ができないという条件をクリアする必要が出てきます。

・デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは簡単に述べると、”売り手企業に対する事前調査”のことを指します。
このデューデリジェンスはM&Aの全ての行程の中で最も時間をかけて取り組みたい重要な局面となります。

調査をするのは委託している専門家です。
事業・財務・法務・税務・IT・人事といった様々な角度から”本当に買収する価値のある企業かどうか”を検証していきます。
他にも場合によっては環境・知的財産・不動産・顧客・技術といった側面からも調査することがあります。

海外M&Aにおいては言語の差などから、相手企業の理解が日本企業を相手とするよりも
困難です。
よって、国内M&A期間はおよそ1〜2ヶ月を要しますが、海外M&Aではそれ以上の期間を要することがほとんどです。

円滑な買収・経営統合に向けて決して欠かすことのできない工程ですのでじっくり取り組みたいところです。

・最終交渉

デューデリジェンスの結果をもとに最後の交渉を行います。
その結果次第で買収額が上下する可能性もあります。

・最終契約書の締結

最終交渉でお互い合意が決定したら、いよいよ最終契約書の締結を行います。
この最終契約書には法的拘束力があります。
契約内容の不履行があった場合は損害賠償請求の可能性も生じるため、売り手側も買い手側も注意が必要です。

・経営統合プロセス

新体制でうまくスタートしていくために会社のシステムを改革していきます。
綿密に計画立てて遂行していく部分であり、半年程度の時間をかけたい重要な作業です。

具体的に行うことは、

✔︎基本方針の策定
✔︎経営体制の統合
✔︎制度面での統合
✔︎業務システムの統合

経営統合と一言で言っても、
買収先企業を子会社として自主性を維持する「連邦型統合」
子会社として残すものの、自社が積極的に関与していく「支配型統合」
組織を自社に吸収し一体化する「吸収型統合」
に分かれます。

双方しっかりとすり合わせを行いながらスピード感を持って取り組む必要があります。

 

海外M&Aには国内企業で取引を行う場合だと重視されない特別な注意点があります。

①外資規制
②土地の所有制限
③資金決済の制限
④各国の競争法に基づく企業統合審査
⑤株式の取得に際して必要な届出の手続き

主にこの5点が挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

①外資規制

業種によっては外国資本が株主となることが全面的に禁止される場合があります。
それ以外にも出資割合が制限される、投資金額が制限される、一定金額以上の資本投下が義務付けられるといった法律があるので注意が必要です。

②土地の所有制限

株式の取得に関してクリアできれば次に考えるべきは土地の所有についてです。
新興国を中心に外資が土地の所有を行うことを禁止もしくは制限している場合があります。

あらかじめ専門家に調査を依頼したうえで、事前に土地を処分してもらう・適切な使用権の取り替えといった対応を検討を行うのが適切です。

③資金決済の制限

資金決済・外国為替管理に関する法令によって海外との資金決済を制限されることもあります。
よって何が起きるかというと、

・買収後に親会社に対する配当が制約される可能性がある
・株式取得の対価や支払方法等に影響が生じる

などが挙げられます。

 

④各国の競争法に基づく企業統合審査

企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かについて審査を行うことを企業統合審査と呼びます。

海外M&Aにおける企業統合審査に際し、買収先の企業の利益等の数値データが一定の基準を超えていないと判明した場合に買収の対象となる会社の所在国だけでなく事業に関わるその他の国へ届出を行う必要があります。
(届出が必要な条件はケースにより変更があります。)

手間が増えるためスケジュールの組み方には注意が必要となります。

 

⑤株式の取得に際して必要な届出の手続き

株式の取得の際には届出や投資許可の取得や変更が必要となります。
こちらも手続きには時間がかかるので注意しましょう。

日本企業の海外M&Aにおけるアウトバウンド取引の課題

日本はグローバル競争が激化している時代の真っ只中にいます。
そのため企業の成長を促す手段としても海外M&Aによるアウトバウンド取引件数が増加傾向にあります。

しかし、多くの会社がアウトバウンド取引で順調に成長しているとは限りません。
むしろ、まだまだ課題は山積みと言えます。

まず一つ目が
「海外企業を買収するための経営体制が整っていない企業が多い」
という点です。

日本企業と海外企業ではやはり言語や文化の違いがあるため、M&Aを提案したり受け入れることが困難な会社がたくさん存在します。

自社の経営理念、ビジョン、強み、M&Aの戦略的な位置付けをいかにして相手企業に伝えるか。
そこがうまくいかずに成約を決められないという問題があります。

二つ目は
「買収後のシナジー実現のための経営リソース配分が不足している」
という点です。

M&Aが成立しても予算や人材が足りない、事業進行が遅れるといった問題が発生することが多いです。
あらかじめの調査が甘かった結果、リソースに対する投資額を間違えてしまい、本来生み出せるはずの価値を生み出し切れていないということです。

この原因は日本企業と海外企業の”コーポレートガバナンスの違いに起因した経営責任に対する意識の曖昧さ”と考えられます。
海外M&Aを検討する際に株主への説明責任を果たすという明確なルールが日本にはないのです。

特にインセンティブ報酬の仕組みには日本と海外では大きな乖離があります。
「事前に数値目標を合意して、 達成したら約束した方法で計算された報酬を支払い、目標達成がされなければベースの報酬のみ支払う」
この仕組みが日本の企業には浸透していないのです。

これではM&A後に多方面から不満の声が上がっても仕方ないと言わざるを得ません。

三つ目は
「そもそもM&A経験が浅くM&A全体のプロセスを意識した型ができていない」
という点です。

日本企業はM&Aに対して”特別なもの”という認識を持つ経営者がまだまだ多いです。
そのため戦略が不十分で目的も曖昧なままM&Aの検討に入ってしまいがちなので、良い交渉がなかなかできていないのです。

M&Aの経験が豊富な企業が取り入れている”型”を自社にも取り入れる行動が鍵を握るでしょう。

 

アウトバウンド取引を検討する日本人経営者はこれからどう行動していくべきか

まだまだ海外M&Aに対して難解な課題を多く抱えている日本企業ですが、もちろん希望はあります。
一歩一歩丁寧に課題を潰していけば企業の成長を促すような最大限に効果のあるアウトバウンド取引が可能となります。

前章で記した課題から考えて日本企業がこれから為すべき行動は以下の通りです。

・海外企業とうまく関わっていくためのスキル・人材の確保
・海外企業にも適応できる制度作り
・M&Aプロセス全体の型作り

・海外企業とうまく関わっていくためのスキル・人材の確保

M&Aを行う場合は双方の企業がコミュニケーションを円滑に進められるかが鍵になります。
自社で英語力とコミュニケーション力に長けた人材を育成していくプログラムを構築することも良いですし、もし時間的コストを考慮するのであればすでにスキルを持っている人材を中途採用するといった方針で人事部で動いていくことも大切です。

具体的には、海外駐在経験者を積極的に採用したり、外国人採用の割合を増加させることで会社全体で英語力やコミュニケーション力を高める効果が表れるでしょう。

・海外企業にも適応できる制度作り

M&Aで成功を収めた企業の特徴として、

「株主への説明責任を果たすため、資本コストも踏まえた収益計画や資本政策の目標を示し、事業ポートフォリオの見直しや投資の意思決定を行っている」
「報酬制度は固定報酬型ではなく、業績目標の達成度合いに応じて報酬を支払うという変動報酬型」

というものが挙げられます。

長期的目線で徐々に企業のスタイルをグローバル基準に寄せていく取り組みを行うことでM&Aにおいても海外企業が自社に対して安心感を持ってくれるようになるでしょう。

・M&Aプロセス全体の型作り

M&A全体の手順について書いてきましたが、日本企業にとって課題となるポイントは以下の通りです。

・M&Aの目的を明確化する
・買収後を見据えたデューデリジェンスの実施
・M&A実行後のモニタリング体制の構築
・国内でも良いので小規模案件に取り組む

・M&Aの目的を明確化する

「M&Aの円滑化が日本の経済発展にとって重要になってくる」
こういった文言に安易に乗っかってM&Aに着手してはいけません。

あくまで自社の5年後10年後の姿を見据え、不足しているリソースや自社の強みを確認しておくことが大切です。
また、M&Aの専門家に頼らず自社の中で方針をまとめておく意識も必要となります。

・買収後を見据えたデューデリジェンスの実施

デューデリジェンスを丁寧に行うことで買収後のトラブルを避けやすくなります。
また、普段の業務で使わないような専門知識が必要になることもあるので専門家によるサポートが必須と言えるでしょう。

買収後の会社運営を想定しつつ、シナジー施策の定量化が鍵となります。

・M&A実行後のモニタリング体制の構築
・国内でも良いので小規模案件に取り組む

無理やり体制を変えるというのは不可能に近いと思うので中長期的に行動しておくことが重要です。

参考資料
経済産業省
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000018.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/kaigaima/image/20180327003.pdf

 

最後に

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