2025.09.30
M&Aコラム
M&Aで競争力強化?造船業界が世界トップに返り咲くために
かつて世界をリードした日本の造船業界は、世界において「造船大国」として確固たる地位を築いていました。ところが、現在は中国や韓国に追い抜かれ、2019年以降は新造船の受注量、建造量ともに減少傾向にあります。再び世界シェア1位を獲得するため、日本の造船業界には何が求められているのでしょうか。
造船業界の現状と課題
造船業界は、日本が誇る重要な産業の一つです。ここでは、造船業界の現状と課題についてまとめてみました。
- 地方圏の経済を支える造船業
経済産業省によると、国内造船業の市場規模は約3.2兆円で、日本が世界に誇るアニメ産業と同等規模の市場であることがわかります。国土交通省の内部部局の一つである海事局の調べでは、2020年度の売上高は2.3兆円。2023年時点の事業者数は922社で、労働人口は70,149人でした。穏やかな気候で良質な港が多く、古くから海運業が盛んであった瀬戸内海沿岸や九州北部などには、多くの造船所が集積。海外との競争激化や技術革新などにより、造船業の状況も刻々と変化していますが、依然として地方経済において重要な役割を果たしています。 - 世界トップからの転落
日本の造船業の世界シェアは、建造量ベースで3位です。かつて日本は世界シェアの5割近くを占める造船大国でしたが、1990年代以降は中国や韓国が急速にシェアを伸ばします。現在では、中国と韓国が上位を占めていますが、これは政府からの巨額な公的支援が大きく影響していると言えるでしょう。特に中国では、業界内の統合・再編の動きが活発で、国内の過剰な競争を抑制すると共に、世界的な競争力を強めていきました。 - 造船業界の課題は?
日本の造船業界が抱える主な課題は、下記の通りです。
- 国際競争の激化と価格競争
中国や韓国の造船業は、政府の強力な支援と大規模な設備投資により、高い生産能力と価格競争力をつけています。一方、日本の造船所はコスト面でこれらの国々と競合することが難しくなっており、特に汎用性の高いばら積み貨物船やタンカーなどの分野で価格競争が激化しています。 - 人材不足と高齢化
国土交通省の調べでは、日本の造船業に従事している技術者数は韓国より多いものの、分散して在籍しているため、各社当たりの技術者数は少ないとされています。さらに日本では、熟練技能者の高齢化が進む一方で、若年層の入職が少なく、深刻な人材不足に陥っています。人手不足が続くと、工期遅れや雇用に必要な賃金の高騰が起き、負のスパイラルが起こる可能性も。また、地方の中小造船所では、事業承継の問題も深刻です。造船業は、溶接や設計、工程管理など、高度な技術と経験が求められる分野が多く、人材育成が急務となっています。 - 環境規制への対応
地球温暖化対策として、船舶の二酸化炭素排出量削減などの環境規制が強化されています。これに対応するため、LNG燃料船やアンモニア燃料船といった次世代環境対応船の開発や建造が求められていますが、技術開発や設備投資に大きなコストがかかります。 - デジタル化の遅れ
日本の造船業界では、ソフトウェアを介したシステム化やデータ活用のノウハウ・技術者が不足しており、デジタル化の遅れが見られます。国土交通省は、デジタル化促進に向けての業界内の対応には限りがあると判定し、業界外部のIT・電気電子技術者等 の活用を推進。デジタル化に向けて、造船業をはじめとする海事産業全体の産業構造の転換が求められています。
参考資料:https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001614700.pdf
https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241227006/20241227006-10.pdf
国際競争力強化に向けた動き
国土交通省は、日本の造船業の国際競争力強化に向けて、省エネ技術や環境対応技術の開発支援や外国人材の活用といった取り組みを進めています。それらに加えて、事業再編による基盤強化を積極的に支持する意向です。
- 大手造船メーカーによる経営統合・協業
日本の造船業界の最大手である今治造船は、M&Aを繰り返して、国内トップシェアの地位を確立しただけでなく、世界第4位の造船メーカーへと成長しました。2021年には、国内2位のジャパンマリンユナイテッド株式会社(JMU)と資本業務提携、および共同出資により、新たな会社である「日本シップヤード」をスタート。両社の技術や営業力を相互に活用し、競争力強化を目指しています。 - 異業種との連携
国際的な競争力を強化するのであれば、造船業同士だけでなく、異業種との連携も必要です。2024年には、セイカダイヤエンジンが長崎県の田中造船を買収しました。セイカダイヤエンジンは、親会社である機械商社の西華産業株式会社の連結子会社で、主に三菱重工業製の舶用エンジンの販売・サービスを手掛けてきました。しかし近年では、脱炭素社会の実現に向けてEV船の開発など、新たな事業領域への展開も模索しています。そのため、この買収により、セイカダイヤエンジンはエンジン販売に加えて、船舶建造という新たな事業を手掛けることが可能になります。
まとめ
日本の造船業界は厳しい状況にありますが、高い技術力と品質管理能力は依然として強みです。再び国際競争力を高めるためにも、統合・再編による異業種との連携はもちろん、 人材確保と育成に力を注ぎ、環境対応船や高機能船など、技術力を活かした高付加価値船の開発・建造に注力することができるでしょう。
最後に
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