ポストマージャー統合 (PMI) の戦略

2023.12.08

M&Aコラム

M&Aの成功は、取引完了後の統合プロセスである
PMI（Post-Merger Integration、買収後統合）
の実行に大きく依存します。この記事では、M&AのPMI戦略の全体像、その重要性、具体的な手順、そして成功のためのポイントを詳細に解説します。

1. PMIとは何か

PMIは、企業が一体化または買収を完了した後に行われる統合プロセスを指します。それは単なる経営方針だけでなく、具体的な業務内容や組織の意識・モチベーションなども包括します。
PMIの目標は、統合により業務の効率化やシナジー効果の最大化を図ることです。具体的には、組織文化の融合、人事・人材の統合、業務プロセスの再設計、および ITシステムの統合がPMIの主要な要素となります。

1.1 組織文化の融合

異なる組織間で共通のビジョンを確立し、互いの企業文化を共有するためのコミュニケーションが行われます。

1.2 人事・人材の統合

人事制度や評価基準の調整、人材戦略の統一、そして新たな業務形態や発足部署への適切な人材配置などが行われます。

1.3 業務プロセスの再設計

統合後の業務の重複や冗長性を解消し、効率化やツール等による自動化を検討・再設計します。

1.4 ITシステムの統合

各企業が保持するデータの一元化やシステムの連携が行われ、社内のITシステムを統合し、意思決定の迅速化や業務の円滑化を図ります。
これらのPMIの段階を適切に経ることで、統合後の企業は強固な基盤を築き、経済的成果や競争力の向上を実現することができます。

2. M&AにおけるPMIの重要性

M&Aの成功は、PMIの適切な実行に大きく依存します。その理由は以下の2点に集約されます。

2.1 シナジー効果の最大化

M&Aの目的は、企業価値の向上や市場シェアの拡大、コストの削減、製品・サービスの品質向上など、シナジー効果の獲得にあります。これらのシナジー効果を最大限に引き出すためには、PMIの実行が必要となります。
2.2 企業買収の増加と必要性の自覚

近年、企業の成長や存続のためにM&Aを選ぶ企業が増えています。そのため、 M&A Post-Merger Integration（PMI）は、多くの企業にとってその将来を左右する重要な過程となっています。

3. PMIの実行プロセス

PMIは以下の手順で進められます。
M&A前の検討
デューデリジェンスの情報を基にPMIを策定し、統合方針を決定
ランディングプランを策定
クロージング
PMIの実施

3.1 M&A前の検討

M&Aの計画段階から、PMIに向けた準備が始まります。目指すべき組織像を描き、統合の方向性を設定します。

3.2 デューデリジェンスの情報を基にPMIを策定

デューデリジェンスで得た情報を基にPMIを策定します。これにより、統合の方向性が具体的に決定されます。

3.3 ランディングプランを策定

M&Aが完了した直後の組織の初期形態を決定するランディングプランを策定します。これには人事配置や業務分担、初期の業務プロセスなどが含まれます。

3.4 クロージング

M&Aの取引が完了し、正式に会社が一つになる瞬間をクロージングといいます。

3.5 PMIの実施

クロージング後、具体的な統合作業が始まります。これがPMIの本格的なスタートとなります。

4. 成功するPMIのためのポイント

PMIが上手く運ぶためには、以下のポイントを考慮する必要があります。

4.1 一貫した計画と実行

オンディールからポストディールまでのシームレスな一気通貫体制が必要です。PMIはM&Aの成否を決定する重要なプロセスであるため、切れ目なく計画と実行を進めることが求められます。

4.2 プレPMIの実施

M&Aが完了する前に、PMIに向けた準備を行うことをプレPMIといいます。これにより、クロージング後に切れ目なく統合作業を開始することが可能となります。

4.3 PMOの設立

PMIを推進する事務局としてPMO（Project Management Office）を設立することが重要です。PMOは、統合方針の検討や合意、プロジェクトの体制やルール作りを担当します。
以上がM&Aの PMI戦略を成功させるための基本的な考え方です。これらのポイントを押さえながら、M&Aを進めることで、より強固な組織を構築し、企業価値を高めることが可能となります。