2024.11.10
M&Aコラム
M&Aデューデリジェンス:成功するM&Aのカギとなる詳細な調査プロセスとは何か?
M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業が成長するための有効な戦略です。しかし、M&A取引を成功に導くことは、必ずしも容易ではありません。成功を引き寄せるカギは、デューデリジェンス(事前調査)にあります。この記事では、デューデリジェンスの重要性とその詳細な調査プロセスについて、成功したM&Aと失敗したM&Aの事例を交えながら詳しく解説。さらに、財務・法務・ITなどにおけるデューデリジェンスの重要なポイントに加え、それぞれがどのようにM&A取引に影響するかについてもご説明します。
1. M&Aとデューデリジェンス
1.1 M&Aの全体像
企業が成長戦略を達成するための手段であるM&Aは、他社との提携・買収などを通じて成長を行う「インオーガニック」戦略の一部です。M&Aは、主に以下の7つのステップに沿って実施されます。戦略策定のプロセスから始まり、対象企業の選定・交渉へと進み、買収企業の統合まで行うのが一般的です。
- 戦略策定
- 対象先候補のリストアップ(ロングリスト・ショートリスト)
- マッチング
- 基本条件交渉(スキーム選択・トップ面談・バリュエーション・基本合意締結など)
- 最終条件交渉(デューデリジェンス・統合計画・最終契約締結など)
- クロージング
- PMI (Post Merger Integration、経営・業務・意識統合のプロセス)
この過程において、デューデリジェンスは最も重要なステップの一つとされています。
1.2 デューデリジェンスとは?
デューデリジェンスとは、M&Aの取引の前に行われる詳細な調査のことで、買収監査とも呼ばれています。この調査は、買収を検討している企業が譲渡対象企業を評価し、買収に値する企業であるかを判断するのに大切です。具体的には、譲渡対象企業の財務や法務、経営状況をはじめ、IT環境などを詳細に調査します。
2. デューデリジェンスの目的
2.1 リスクの特定と評価
M&Aにおけるデューデリジェンスの最も重要な目的の一つは、取引に関連するリスクを特定し評価することです。譲渡対象企業の財務状況、法務状況、経営状況、IT環境などを詳細に調査することで、買収に関連する潜在的なリスクを明らかにします。リスクの特定と評価は、買い手側の譲受企業が適切な取引価格を決定し、取引後の不測の事態を予防するために欠かせません。
2.2 企業価値を評価
デューデリジェンスは、売り手側である譲渡対象企業の真の価値を評価するために行われます。財務デューデリジェンスの実施により、譲渡対象企業の財務状況を把握でき、適切な企業価値を算出することが可能に。企業価値の評価は、買収価格の交渉と最終的な価格決定に直接影響します。
2.3 ビジネスチャンスの発見
デューデリジェンスを通じて、新たなビジネスチャンスを発見することも可能です。例えば、譲渡対象企業の製品やサービスが新たな市場で有望であるという事実や、売り手側企業のITシステムが、譲受企業のビジネスに大きな価値をもたらす場合もあります。そのため、デューデリジェンスは取引契約後のトラブルを回避するため、さらには、新たなビジネスチャンスを発見するために、M&A取引前に必ず行われるものです。
3. デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスにはさまざまな種類があり、それぞれが異なる目的のもとに実施されます。以下に、主要なデューデリジェンスの種類とその目的をご紹介します。
3.1 事業(ビジネス)デューデリジェンス
事業デューデリジェンスとは、譲渡対象企業のビジネスモデルや市場環境、競争状況などを詳細に調査することです。この調査を通じて、買い手側企業は、譲渡対象企業の事業の持続可能性や成長潜在性を評価します。事業デューデリジェンスは、売り手側企業の事業が、自社ビジネスとどのように統合できるかを知るのに役立ちます。
3.2 財務(ファイナンシャル)デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、譲渡対象企業の財務状況を調査することに焦点を当てています。決算書や総勘定元帳、監査法人による報告書や銀行に提出した資料などを調査することにより、適切な取引価格を決定できるほか、買収後に生じるリスクを回避できます。
3.3 法務(リーガル)デューデリジェンス
法務デューデリジェンスは、譲渡対象企業が関与する法的問題を詳細に調査します。例えば、売り手側の企業が債務を抱えたままM&A取引を行うと、譲受企業が賠償金を払わなければならないケースも。また、事業を継続するためにも、譲渡対象企業が行政機関から得ている許認可について調査しなければなりません。
3.4 税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスとは、譲渡対象企業の税務状況を調査することです。この調査を通じて、買収する側の企業は、譲渡対象企業に税務リスクが存在するかを評価します。
3.5 ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスは、譲渡対象企業の情報システムを詳細に調査します。この調査を実施することで、新システムを導入するかどうかを決定したり、システムを統合するのにかかる費用を算出したりできます。
3.6 人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスは、人事状況や組織文化を詳細に調査します。この調査を怠ることで、待遇に不満を抱えた優秀な人材が流出してしまい、事業に打撃を受ける可能性があります。事業成長に大きく貢献する社員の離職防止のためにも、人事デューデリジェンスはしっかり行う必要があるでしょう。
3.7 その他のデューデリジェンス
事業や財務といった主要なデューデリジェンスの他にも、環境デューデリジェンス、技術デューデリジェンスなど、特定の業界や取引に特有のデューデリジェンスが行われることもあります。M&A取引を成功させるためには、これらのデューデリジェンスも重要なステップです。
4. デューデリジェンスの進行
デューデリジェンスは、以下のようなプロセスで進行します。
- 調査チームの組成:M&Aの専門家や内部スタッフからなる調査チームを組成。
- 調査方針の決定:調査の目的と範囲を明示し、調査方針を決定。
- 既存情報の共有:対象企業に関する既存の情報を調査チームに共有。
- 資料のリスト化、請求:必要な資料のリストを作成し、譲渡対象企業に請求。
- 資料の確認、分析:提出された資料を確認し、分析。
- 聞き取り調査の実施:譲渡対象企業の関係者に聞き取り調査を実施。
- 調査結果をふまえた対応:調査結果を基に、必要な対応を実行。
このプロセスは、すべてのデューデリジェンスに共通しています。ただし、具体的な進行方法や期間については、デューデリジェンスの種類や取引の複雑さにより異なる場合があります。
5. デューデリジェンスの成功への道
デューデリジェンスを成功させるには、以下のポイントに留意しましょう。
5.1 明確な目的を持って、M&A戦略を策定する
最初から明確な目的を持つことが、M&Aの成功には欠かせません。M&Aの目的が明確であればあるほど、デューデリジェンスの目的も明確になり、適切な調査方針が立てやすくなります。
5.2 自分なりの成功条件を定義づける
何をもって成功とするかは、企業ごとに異なります。そのため、自分なりの成功条件を定義づけることが重要です。成功条件を定義すれば、デューデリジェンスの方向性も明確になり、必要な調査項目を絞り込めます。
5.3 十分に検討した上でパートナー(支援機関)を選ぶ
M&Aで実施するデューデリジェンスには、豊富な知識と経験が必要です。デューデリジェンスを支援するパートナーを選ぶ際には、支援機関の専門知識と経験を検討しましょう。
5.4 デューデリジェンスには十分な手間と時間をかける
デューデリジェンスは、取引の成功を左右しますから、十分な手間と時間をかけることが必要です。短期間で結果を求めるのではなく、長期的な視点で取り組まなければなりません。
5.5 社内外での徹底した情報管理を行う
デューデリジェンスでは、多くの機密情報を扱います。情報漏洩を防ぐためにも、情報管理を徹底して行うことが求められます。
6. デューデリジェンスの費用
デューデリジェンスの費用は、種類や規模、専門家の報酬などにより異なります。デューデリジェンスは、取引の成功を左右する大切なステップですから、費用を惜しまないことが重要です。
7. まとめ
企業を成長させる手段の一つであるM&A。M&Aが成功するかどうかは、デューデリジェンスに大きく依存しています。デューデリジェンスは、買収を検討する企業が譲渡対象企業の真の価値を評価し、リスクを特定・評価し、適切な取引価格を決定するための重要なステップです。デューデリジェンスを成功させるためにも、明確な目的と戦略を定め、十分な手間と時間をかけて、適切なパートナーと共に徹底した情報管理を行いましょう。
最後に
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