M&Aコラム/動画/インタビュー

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2023.01.13

M&Aコラム

中小企業がM&Aで失敗してしまう6つの理由とその対策

昨今、日本でもM&Aが大変注目されており気になっておられる経営者の方も多いのではないでしょうか?
日本では2012年以降、M&A件数が増加傾向にあり2019年には4000件を超えています。
コロナ禍で一度件数は減少したものの依然として高い水準を保っています。
(出典:レコフM&Aデータベース)

そんなM&Aが注目されるようになったのには背景があります。
それは各企業での”社長の高齢化による後継者問題”です。

せっかく高い技術を持っているのに後継者がいないため廃業を余儀なくされる。
そんな悲しいことが日本各地で起きているのです。

困るのはもちろん、会社の経営者だけではありません。
所属している社員も生活の不安で夜も眠れなくなるかもしれません。

しかし、会社存続のための手段の一つにM&Aがあります。

M&Aによって売り手側は成長に必要な経営資源を獲得できるので、事業を継続しながら社員の生活も守ることができます。

一方、M&Aにおいては買い手側にもメリットがあります。

買い手側はコストを抑えながら新規事業に参入することができます。
M&Aは互いにとってメリットのある重要な施策となるのです。

しかし、生産性向上による日本経済の活性化に繋がるM&Aですが、実は落とし穴も存在します。
本記事ではM&Aの失敗要因や事例を深掘りしつつ、実際にM&Aを考えている経営者の方々がどう対策していくべきかを伝えていきます。

0.M&Aの手順について

まずはM&Aのイメージを持っていただくために、手順をまとめておきます。

・会社M&Aの専門家に相談

専門的知識が必要な業務なので、専門家からのサポートを受けることが大切です。
専門家からのサポートを得ることで、自社に合った買収相手を見つけやすくなるでしょう。

ここで注意したいのは、専門家を慎重に選定することです。
事前の下調べを入念に行いましょう。

・相談のうえ、本格的にサポートを依頼する場合はM&Aの専門家(仲介会社)と委託契約を結ぶ

専門家さんと相談のうえ、契約したい方が決まれば手続きに入ります。

委託契約には仲介契約とアドバイザリー契約の2種類があります。

仲介契約は「買収側と売却側の両方と契約し、お互いが譲歩できる点を見つけて成約につなげていく役割を持つ」という内容です。
一方アドバイザリー契約は「買収側か売却側のどちらか一方と契約し、クライアントの利益最大化を目指して成約につなげていく役割を持つ」という内容です。

まず仲介契約のメリットとしては”最終的に成約につながる可能性が高い”ということが挙げられます。
お互い譲歩しているので納得した状態で常に交渉を進めることができます。

逆にデメリットとしては”全てが理想通りに進むとは限らない”ということが挙げられます。

次にアドバイザリー契約についてです。
まずメリットとしては”自社方針が確実に反映された成約になりやすい”ということが挙げられます。
あくまで利益を追求した交渉が行われるので、自社としての不満点は無くなります。

デメリットとして挙げられるのは”交渉が比較的長引く”ということです。
あくまでクライアントの意向を100%反映した状態で交渉を進めるので、相手側への説得が必要になってきます。

どちらの契約タイプを選ぶかは自社の方針をよく確認しながら慎重に吟味しましょう。

・買収先会社の選定

専門家との契約手続きが終われば、複数の企業をピックアップして自社に合った買収先を選定します。
この時買い手側は財務状況や業績をまとめた”企業概要書”を比較します。
企業概要書は先ほど委託契約を交わした専門家に作成してもらいます。
専門家の事前リサーチが非常に重要であることがここでも理解いただけるかと思います。

買い手側が希望の相手企業を見つけた場合、売り手側の了承も得られた場合にのみ売り手側の企業名とさらに詳細な財務情報が開示されるというシステムです。

・条件交渉

お互いの了承が得られた段階で条件交渉に入ります。
M&A専門家により譲渡額や買収額の調整を行います。

・基本合意書の締結

条件が大筋の合意がなされたら基本合意書の締結を行います。
法的拘束力はなく、あくまで内容確認という位置付けです。

例外として買収側が独占交渉権を得る場合があります。
独占交渉権は法的拘束力があり、売り手側が1,2ヶ月他の企業と交渉ができないという条件をクリアする必要が出てきます。

・デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは簡単に述べると、”売り手企業に対する事前調査”のことを指します。

調査をするのは委託している専門家です。
事業・財務・法務・税務・IT・人事といった様々な角度から”本当に買収する価値のある企業かどうか”を検証していきます。
他にも場合によっては環境・知的財産・不動産・顧客・技術といった側面からも調査することがあります。

期間はおよそ1〜2ヶ月を要します。
もっと短い期間で終了するケースもありますが、より買収のリスクを減らすのであれば1〜2ヶ月くらいかかる想定をしておくべきです。

円滑な買収・経営統合に向けて決して欠かすことのできない工程です。

・最終交渉

デューデリジェンスの結果をもとに最後の交渉を行います。
その結果次第で値段が上下する可能性もあります。

・最終契約書の締結

最終交渉でお互い合意に踏み出せたら、いよいよ最終契約書の締結を行います。
この最終契約書には法的拘束力があります。
契約内容の不履行があった場合は損害賠償請求の可能性も生じるため、売り手側も買い手側も注意が必要です。

・経営統合プロセス

新体制でうまくスタートしていくために会社のシステムを改革していきます。
綿密に計画立てて遂行していく部分であり、半年程度の時間をかけたい重要な作業です。

具体的に行うことは、

  • ✔︎基本方針の策定
  • ✔︎経営体制の統合
  • ✔︎制度面での統合
  • ✔︎業務システムの統合

経営統合と一言で言っても、
買収先企業を子会社として自主性を維持する「連邦型統合」
子会社として残すものの、自社が積極的に関与していく「支配型統合」
組織を自社に吸収し一体化する「吸収型統合」
に分かれます。

 

1.M&Aで失敗する理由6選

M&Aによって、かえって業績が悪化してしまい多くの損害を出した企業は少なくありません。

その中でもM&Aにおいて絶対に避けるべき要因を6つ挙げていきます。

  • デューデリジェンスが不十分であること
  • M&Aの手続きをサポートしてくれる人材の選択を間違える
  • 人材の流出
  • 情報漏洩や手続きの不備
  • 株券・株主の所在が不明
  • 戦略がない

それぞれ詳しく見てみましょう。

 

・デューデリジェンスが不十分であること

デューデリジェンスというのは相手企業に対する事前調査のことを指します。
リスクや企業価値を算出することが目的で、M&Aにおいて必要不可欠な手続きです。
また、専門家に協力を得る必要があることが多く費用負担を考慮に入れる必要があります。

デューデリジェンスが不十分だった場合、後で

「売り手企業と取引先で起きていたトラブル」
「貸借対照表に記載されていない簿外債務」

といった”想定外”が起きてしまう可能性が高くなります。
当然信頼のガタ落ち、業績悪化につながってしまいます。

ちなみにデューデリジェンスには注意点が2つあります。

1つは”線引きを決めるべし”ということです。
不十分な調査はいけませんが、何もかも調べ抜くということは不可能です。
ダラダラ調査期間を伸ばすということのないようにしましょう。

もう1つは”思い込みを捨てるべし”です。
特に、古い付き合いのある会社と交渉する際は気をつけなければいけません。
表立って問題はないとしても、デューデリジェンスでしか分からない問題点が浮き彫りになることもあります。
「良い関係だし今後もうまくいくだろう」という思い込みは危険です。

・M&Aの手続きをサポートしてくれる人材の選択を間違える

M&Aの手続きにおいて仲介業者さんや専門家の方からの協力は欠かせません。

しかし、M&Aのプロであってもどんな業種にも強いとは限りません。
専門色の強い企業ほど企業価値の選定を間違えてしまう可能性は充分にあります。

M&Aサポートに頼りっきりだったせいで後々トラブルに繋がることは充分あり得ます。

 

・人材の流出

M&A交渉は基本的に今いる人材をもとに企業価値を選定します。
しかしM&Aを行った結果、環境の変化を理由に社員が離職してしまうケースもあり得ます。

優秀な人材がいなくなることはもちろん業績悪化につながってしまうので注意しなければいけないことです。

 

・情報漏洩や手続きの不備

M&A手続きにおいて契約成立を前に情報が外に漏れてしまうことはご法度です。
相手側からの信頼はガタ落ちして、交渉は無かったことにされてしまうでしょう。

飲み会の席などでつい約束を忘れてしまっていたり、酔っ払って思わず口が滑ってしまったりといったお粗末なことは避けたいところです。

・株券・株主の所在が不明

中小企業においてよくあるのが「株主名簿がない」「正確な株主が反映されていない」といった問題です。
調査に非常に時間がかかってしまい、M&A交渉がうまくいかない可能性が高くなります。

交渉において相手を待たせてしまうのはご法度です。

・戦略がない

何事も戦略のない行動は成功に繋がりません。
それはM&Aにおいても同じです。

M&Aすること自体が目的となり、肝心な「資産・人材・事業をどう活かすか」という戦略が練られていなければ、M&Aが失敗に終わる恐れがあります。

あくまで経営戦略の一つとしてM&Aを考えましょう。

 

2.中小企業M&Aの失敗事例

第2章では日本で実際に起きた失敗例を紹介していきます。

 

✔︎売り手側の情報漏洩により交渉決裂

後継者不足により事業継続が危ぶまれていたA社。
そこでA社はM&Aを検討するためにM&A仲介業者に相談を持ちかけます。

話は順調に進み、4ヶ月後にはA社の買い手になってくれる企業が現れました。
そして基本合意にいたり、いよいよ最終契約に向けて調整している段階でした。

その頃A社では「くれぐれも情報漏洩はしないように」という警告を受けていました。

しかし、ある社員が警告を破り取引先など周囲の関係者にM&Aを行う旨を漏らしてしまったため、買い手企業は激怒し、交渉決裂してしまいました。

 

✔︎優秀だった社員の流出

M&Aによる事業の安定化を狙ったB社(売り手)。
一方、B社の優秀な技術を受け継ぐことで新規事業を発展させたい企業も現れました。
この2社の社長やM&Aチームによる話し合いはスムーズに進み、お互いwin-winの関係を築けると確信していました。

しかし、いざM&A契約が決定し新体制が始まってからとんでもないことが起きました。
優秀な技術を持っていた社員が続々と退職してしまったのです。
社員から新しい環境についていけないと不信感の声が上がっており・・・

現場の声を大切にせずM&A担当だけで話を進めてしまったことにより起きた悲劇でした。

 

✔︎売り手企業が陰で抱えていた問題が発覚

C社は新規事業拡大のため、とある会社との間でM&A契約を交わしました。
しかし、後になって隠れていた問題が発覚することになります。

実は契約を交わした会社が”残業代の未払い”という巨額の債務を抱えていたのです。
その額を計算するとなんと10億円。

C社は思わぬ赤字で新事業を始めることとなりました。

 

✔︎賃借対照表に未記載だった負債

1万人の会員を持つWeb系の消費者向けECサービスを提供する企業を買収したD社。

しかし、買収先企業がサービスとして「新規入会者に対し1万円相当のポイントを発行する」という大盤振る舞いをしていたことが後々わかります。
サイト内でのみ利用できるこのポイントは債務ではありながら、貸借対照表に負債としては全額記載されていませんでした。
しかしユーザーがこのポイントを利用することを考えると、1万円×1万人=1億円の債務を負っていることにもなります。

D社の事業はいきなりマイナススタートとなりました。

他にも書面・帳簿の見落とし、隠れて負債を抱えていたり、会社によっては有害な廃棄物を地下に埋めていたりといった問題が散見されています。

 

3.失敗例から得られる教訓

M&Aは売り手も買い手もwin-winだと感じられる契約を遂行できるのが理想です。
しかし、ちょっとした綻びから交渉決裂・業績悪化、最悪の場合は廃業にも繋がります。

M&Aが100%成功を保証できるものではないとはいえ、防げる失敗は未然に防ぐことが可能です。

第3章では、お互いに利益があるようなM&Aを実行できるよう事業者が注意すべきことをお伝えしていきます。

  • ✔︎経営者同士だけではなく社員の声も調査
  • ✔︎デューデリジェンスが全てではないという心がけ
  • ✔︎買い手企業側は売り手側のことを尊重する
  • ✔︎M&Aの目的を明確化
  • ✔︎M&A仲介業者の協力を求める時は事前にリサーチする

詳しく見ていきましょう。

 

✔︎経営者同士だけではなく社員の声も調査

経営者やM&A担当チームだけで交渉を進めると、どうしても社員への細かなケアが後回しになりがちです。
そのまま交渉を進めて何でも決めてしまうと、いざ新体制が始まると優秀な社員が離れていってしまうなんてことはよくある話です。

よって、「この条件で本当にずっと社員さんがついてきてくれるだろうか?」と考えることが大切です。
社員さんの声をアンケートなどで集めたり、取引先からの評判を調査することも重要になってくるでしょう。

経営において社員さんのモチベーションは常に高く保つ必要があります。
新体制になったことで、より社員さんが元気に働けるような環境に変えていくことが大事です。

 

✔︎デューデリジェンスが全てではないという心がけ

M&Aにおいてデューデリジェンスは非常に重要な作業であることは間違いありません。
しかし、実際の調査結果を100%盲信することは非常に危険です。

数字やデータとして得られるだけの情報にはどうしても限界があります。
表面化しないような問題が眠っていることもあると認識しておくことが大切です。

相手の取引先などから会社のイメージを聞いてみるといった行動も非常に重要になってくるでしょう。

 

✔︎買い手企業側は売り手企業側のことを尊重する

M&A契約というのは結局「人と人との間で結ばれる約束」です。
相手を尊重しない交渉はトラブルを招くだけで何も良いことはありません。

売り手側が持ってしまった不信感は徐々に拡がっていき、他社さんの耳にも届いていく可能性があります。
会社にとっての損害はもはや計り知れません。

これから協力していただくということを前提に交渉するように努めましょう。

 

✔︎M&Aの目的を明確化

流行っているというだけの理由で、勢いでM&Aを検討する会社が増えています。
しかし経営戦略なきM&Aに勝ち筋はありません。
M&A契約後の立ち回りをしっかり計画立てることが重要になります。
会社の存亡がかかる重要な場面です。

経営戦略の一環としてM&Aを考え、相手企業の資源や人材を会社の成長に繋げられるか丁寧に考えましょう。

 

✔︎M&A仲介業者の協力を求める時は事前にリサーチする

M&Aの専門家に任せておけば大丈夫だ、という思考は非常に危険です。
業者の得意不得意分野の把握、担当者との相性なども重要です。

M&Aでアドバイザーの協力を得たい場合はご自身が担当者に求めるものを明確化した上で、技術があり評判も良い専門家の方を探しておくことが大事です。

 

最後に

M&Aについて何かお困りごとはご遠慮なくM&APassまでご相談ください。

M&Aにおける充実したサポートを基本合意まで

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