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2023.06.22

M&Aコラム

事業承継ネットワークについて

現在、日本企業のうち99%が中小企業です。
中小企業の発展こそが日本の経済や雇用を安定させる鍵を握っていると言っても過言ではありません。

しかし、現状は高齢化社会が進行したことによって中小企業の深刻な”後継者不在問題”が浮き彫りになっています。
せっかく貴重な技術・人材を持っているのに泣く泣く廃業に踏み切る。
そんな会社が今増加しています。

そんな問題を少しでも解決するために現在注目されているのが、中小企業庁と都道府県の様々な支援機関が連携を図って行う「事業継承ネットワーク」という取り組みです。

本記事では「事業継承ネットワーク」に関する詳しい内容や利用法、今後の展望などを話していきます。

以下に当てはまる方にオススメの記事です!

・自社の後継者問題に悩んでいる方
・自分の年齢が気になっている経営者の方
・事業承継の取り組みや支援策について知りたい方
・近いうちに事業承継を実践する予定の方
・事業承継に向けて具体的にどう動けばいいか分からない方

 

1.事業承継ネットワークとは

事業承継ネットワークとは「商工会や金融機関などの支援機関から構成された事業継続のサポートを行う取り組み」のことを指します。
平成29年度から本格的に事業としてスタートしました。

1-1. 事業継承ネットワークの目的と背景

昨今の日本の中小企業における”後継者不在問題”を受け、経営に携わる方々に向けて事業継承に向けた気付きの機会を提供し、その準備を促すことが目的です。

現在の日本企業の経営者は平均年齢が60歳を超えており、年々増加傾向を辿っています。
引用元:東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210804_02.html

さらに、2020年時点において60代の経営者のうち後継者が決まっていない方の割合は48.2%、70代の経営者のうち後継者が決まっていない方の割合は38.6%、80代の経営者のうち後継者が決まっていない方の割合は31.8%というデータがあります。
引用元:中小企業庁 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html

これらのデータは、後継者がいないため廃業の危機に陥っている企業がたくさん存在するということを意味しています。
貴重な技術や雇用が奪われて、日本の経済を支えている中小企業が次々に倒れてしまっては社会全体に大きな悪影響を及ぼすことになります。

そんな背景がある中で事業承継ネットワークは始動していきました。

1-2 事業承継ネットワークの仕組み

各都道府県で、支援機関が相互に連携を図ることで事業承継の実現に向けてサポートを行う体制が整っています。

①相談

まず、事業引継ぎ支援センターが最初の窓口として相談の機会を設けています。
引用元:中小企業庁財務課
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170605shoukei.pdf

(事業引継ぎ支援センターとは、47都道府県に設置された事業承継ネットワークの取りまとめ役を担う機関です。
また、事業承継に関連する専門家の育成や派遣を行うなど事業者支援に力を入れています。)

また、気軽に相談ができる環境を作るために様々な工夫・アプローチが行われています。

②事業承継診断

事業引継ぎ支援センターと金融機関や商工会・商工会議所の担当者、顧問先を有する士業専門家らが連携を行って事業承継診断が行われます。

ここに、それぞれの役割と活動内容をまとめておきます。

金融機関

日常的に取引先企業に接することで経営状況・ニーズ・課題を把握し、企業の価値向上や日本経済の発展に繋げる役割を持っています。

主な活動として以下の3点が挙げられます。

・セミナーや訪問による情報提供や専門家の紹介
・M&Aマッチングの実施
・株式の取得や新規事業への取り組みにおける資金援助

 

商工会・商工会議所

所属する経営指導員が日々巡回指導を行うことで、経営者との間に信頼関係を築くという役割を持っています。

主な活動として、事業承継に関するセミナーの開催や情報提供、専門家の紹介を行っております。

 

士業専門家

事業承継に関わる士業は、主に以下の5つです。

①公認会計士
②司法書士
③税理士
④中小企業診断士
⑤弁護士

①公認会計士

監査及び会計の専門家として広い見識に基づいた支援を行う役割を持っています。

主な活動として、以下の3点が挙げられます。

・プレ承継のサポート
(プレ承継とは、事業承継の準備段階のことを指しています。経営状況・課題の見える化、経営改善に取り組んでいきます。)
・M&Aにおける売却価格試算の公正な評価
・中小企業会計要領や中小会計指針などの適正な会計の導入

 

②司法書士

商業登記、不動産登記等の実務家として支援を行う役割を持っています。

主な活動として、以下の3点が挙げられます。

・株式・事業用不動産の承継サポート
・M&A周りのサポート
・担保権の処遇についてのサポート

③税理士

中小企業の経営者と最も深い関係にあるのが税理士であると言えます。日常的に関わりが深いだけでなく、決算に関わる支援を行っているからです。

活動は多岐にわたっており、

・「担い手探しナビ」の利用を通じたM&A支援
・相続税に関する助言や株価の評価
・生前贈与のやり方や種類株式発行の助言
・中小企業会 計要領・中小企業会計指針の活用支援

などが挙げられます。

④中小企業診断士

中小企業支援法に基づいて様々な経営課題への対応、経営診断への取り組みなど”ホームドクター”としての役割を持っています。

 

⑤弁護士

経営者の代理人となって、金融機関や株主、従業員などの関係者への説明・説得を行うことで円滑に事業承継を進めるために調整を行う役割を持っています。

主な活動としては

・株主関係や会社債務に関する金融機関との調整において法律面の検討や課題の洗い出し
・スキーム全体の設計
・契約書などの書面作成

実際に担当者が企業を訪問し、診断票に基づく対話を通じて経営者に対して事業承継に向けた準備のきっかけを提供します。

10分程度の簡潔なやり取りで完了します。

ちなみに、診断票に書かれてある内容のイメージは以下の通りです。

Q. 会社の10年後のイメージを語れる後継者候補はいるか

Q. 会社経営のリスク状況について

Q. 事業用資産の状況について

Q. 後継者に対して経営者教育や人脈・技術の引継ぎなど具体的な準備を進めているか

Q. 役員や従業員・取引先など関係者の理解を得られるように取り組んでいるか

③承継計画策定支援

②での事業承継診断の結果に基づいて、事業引継ぎ支援センターが事業承継計画の策定支援を行います。

設定する項目としては

・中長期的な経営計画

会社の現状を分析し、「事業の方向性」「売上・利益の数値目標」「具体的な行動予定」を決めていきます。

・事業承継を行う時期

後手に回らないように計画を立て、着実に準備を進めます。

・活用できる支援策の検討
事業承継を行う会社向けに様々な支援策があるので、状況に応じて活用していきます。

一部支援策の事例を紹介します。

✔︎経営承継円滑化法による相続税や贈与税の納税猶予制度
✔︎事業用財産を後継者に集中させるための遺言の活用
✔︎株式を分散させないために定款に譲渡制限ならびに相続人に対する売渡請求規定を設ける

④各支援機関からの支援の実施

事業承継診断の結果から各公的機関から適切な支援が実施されます。
事業継承ネットワークを構成している主な公的機関は「中小企業庁」「経済産業局」「中小企業活性化協議会」「よろず支援拠点」「独立行政法人中小企業基盤整備機構」「信用保証協会」となります。

それぞれの役割と活動内容をまとめておきます。

「中小企業庁」「経済産業局」

中小企業の事業承継が円滑に行われるように環境整備に取り組むという役割を持っています。

主な活動内容として

・民法の特例、金融支援、事業承継税制、所在不明株主に関する会社法の特例などの基盤的な制度の整備
・事業承継に関するワンストップ支援を行うと共に、支援事業への認知を増やすための広報活動

などが挙げられます。

「中小企業活性化協議会」

財務上の問題を抱えている中小企業に対して、経営再建に向けた取り組みを支援する役割を持っています。

主な活動内容として

・経営状況に応じ支援の実施、また関係支援機関や支援策の紹介
・再生支援が困難と判断した場合に、早期清算や債務整理を目的とした助言や代理人弁護士の紹介
・企業の法的整理などにより保証債務が顕在化した経営者や保証人に対し、 経営者保証に関するガイドラインによる保証債務の整理を支援

などが挙げられます。

「よろず支援拠点」

中小企業が抱える様々な経営課題に対し、地域の支援機関と連携しながら無料で対応するワンストップ相談窓口としての役割を持っています。

主な活動内容として

・在籍している専門家による事業承継の相談
・各支援機関の紹介

などが挙げられます。

「独立行政法人中小企業基盤整備機構」

各支援機関が円滑に事業承継の支援を実施できるように環境整備する役割を持っています。

主な活動内容として

・経営者向けセミナーやフォーラムの開催
・中小企業経営者の意識喚起や支援制度の広報活動
・後継者研修
・支援機関の課題解決に資する講習会や助言の提供

などが挙げられます。

「信用保証協会」

事業資金のお借入を円滑に進めるための資金調達支援を行う役割を持っています。

主に、専門家を派遣しつつ協力体制でのサポートや、取引金融機関との意見交換の場を設ける活動を行っています。

各公的機関が連携していくことで多角的に事業承継に関する支援を行うことができます。

公的機関以外にも中小企業団体中央会、認定経営革新等支援機関、登録M&A支援機関も支援実施機関としての役割を持っています。
なお弊グループは認定経営革新等支援機関であり、弊社は登録M&A支援機関です。

2.各自治体の支援内容・実績

令和3年度は全国の事業引継ぎ支援センターへの相談者が20,841名にのぼり、過去最高を記録しました。
さらに、第三者承継の成約件数は1,514件とこちらも過去最高を記録しました。

そして、事業引継ぎ支援センターでは創業希望者と後継者がいない中小企業の事業引継ぎの橋渡しを行う”後継者人材バンク事業”を行っています。
後継者人材バンク事業においても、登録者数が 1,368名(前年度から1%増加)、成約件数 53 件(前年度から47%増加)でいずれも過去最高を記録する形となりました。

事業承継に対するニーズは年々高まっており、今後もその傾向は続くと考えられます。

(引用元:独立行政法人 中小企業基盤整備機構https://www.smrj.go.jp/org/info/press/2022/ki772s0000002mv1-att/20220609_press_01.pdf

さて、第二章では東京都、

2-1.東京都における事業承継支援実績

東京都は新型コロナウイルス感染拡大の初期である令和2年度に相談件数が減少する結果となりましたが、令和3年度は全体的な数字を新型コロナウイルス感染拡大前程度にまで回復させています。

新規相談件数に関しては新型コロナウイルス感染拡大前を上回る結果となりました。

 

令和元年度
令和2年度
令和3年度
新規相談件数
908件
851件(↓)
1002件(↑)
総相談件数
1576件
1177件(↓)
1365件(↑)
成約件数
75件
90件
86件

 

(引用元:https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1029522

コロナ禍が続いているからこそ、会社を新しい形で前進させていく動きが活発化していることが読み取れます。

3.事業承継ネットワークを利用する際に必要なもの

現在は全国に事業引継ぎ支援センターが設置されていて、相談しやすい環境が揃っています。

しかし、事業承継は短期間で簡単に済むというわけにはいかず、長期スパンで考えておく必要があります。
そのため「早め早めの準備と行動」が大切になります。

そこで、円滑に相談を進めていくために必要なものは

・センターへ相談の予約
・会社概要が分かるパンフレット
・直近の決算書
・その他自社の状況が分かる書類

用意周到な準備があれば、自社に合った専門家を早急に紹介してくれて早く支援を受けられる可能性が高くなります。

また基本的に相談は無料でできますが、専門家を派遣してもらう場合は費用がかかります。
費用負担の準備も忘れないようにしておきましょう。

4.事業承継ネットワークの今後の展望

これからの時代は、少子高齢化による後継者不在問題がさらに顕在化されることが予想されます。
よって事業承継ネットワークの重要性も今後ますます高まっていきます。

若い世代に引き継ぐことによる事業革新、大手グループの傘下に入ることによるより一層の生産効率性の上昇など、企業の様々な挑戦を支えるための環境整備が強化されていくでしょう。

すでに変わり始めていますが、これまで”課題解決型支援”だったものが”併走型支援”に変わり始めています。
つまり、支援担当者は企業の経営者や従業員と対話を繰り返すことで内面を深く理解し、信頼関係を築くことが必須となっていきます。
信頼関係が出来上がるからこそ、より適切な支援が実施できるようになるでしょう。

また、広報活動の活発化も進むことが予想されます。

これから経営者の方も情報収集に敏感になることで円滑な企業経営が可能となるはずです

最後に

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